2.技術情報調査はなぜ必要か

特許情報の利用は、①権利情報としての利用と、②技術情報としての利用の2つの側面があります。

権利情報は、多くの企業において、製品を市場に出す際に、他社特許を侵害していないか確認するための調査として、比較的よく実施しています。

技術情報の調査は、自社で行おうとしている研究開発が、すでに他社が行なったものではないかを確認し、重複開発・重複投資・重複出願を避けるために行うものです。

無駄な投資をしないためにも、研究開発前の技術調査はとても重要です。

ところが、この調査は調べる特許等の量もそこそこあるため、なかなかハードな作業になります。

そのため、どこの企業もなかなか手が回らない、というのが現状なのではないでしょうか。

予算があれば、調査会社に外注するのも手段の一つですが、予算がない場合は社内でやることとなります。そんなときに、知財部門の方々は自分達だけでやるのではなく、研究者も巻き込んでやれるよう、巻き込む力を磨いておく必要があります。

言い換えると、誰かにやってもらうための人間力を鍛えることが知財部門の人に求められるスキルともいえます。

知財部門に限らず、人間力・コミュニケーション能力は、どんな時もあって損はないものです。

当社がセミナーや授業などでよくご紹介する、クリステンセンの『イノベーションのDNA』では、イノベーターになるために身に付けておくスキルとして、
1.関連づける能力
2.質問力
3.観察力
4.ネットワーク力
5.実験力
の5つが挙げられています。

また、ストーリーテリングの手法を使って説得力ある説明で周りを巻き込んでいくことも必要です。

当社にも開発前の特許調査マップ作成の依頼があります。
開発前の調査を行うと、開発の方向性決定や進捗把握、出願のアドバイス、事業を意識した特許活用まで携わることができるため、単なる机上の特許ではなく、事業に活用できる特許出願アドバイスができ、生きた特許を取得することにつながります。

なぜ日本は技術力はあるのに競争力がないのか、と言われて久しいですが、特許情報をうまく活用すれば、競争力につながる特許を出願することができます。

技術情報としての特許の側面が、もっと浸透することが必要ではないでしょうか?

2017年09月10日